原題は、「愛せない母親 娘のためのヒーリングガイド」。邦題は、「毒親の棄て方」という、目を引くタイトルであるが、むしろこの方が内容にびったりだ。
前半は、筆者のところにカウンセリングに訪れた女性たちの母からの虐待と、それが大人になった彼女らにどんな影響を与え、そしてどのようにそこから立ち直っていったかの具体例がいくつも述べられている。
どうやら子供は、虐待をされても「母が悪いはずがない」「私が悪いから、愛されない」と思うようだ。
何とか子供時代を乗り越えて自立した後も、子供のころの虐待はその娘の人生に大きな影を落とす。
例えば、子供のころからアル中の母の食事を作り、テレビを見ながら寝た母の手から火のついたタバコとグラスを片付けていた娘。
付き合う相手が母そっくりのろくでなしばかりになってしまう。筆者のところに相談に来た彼女は、それは、人の世話をすることによってしか自分は愛されないと思っているからだと気づく。
この本では「母親」についてのみ書かれているが、父親もまた、母を嫌って家に帰ってこなかったり、虐待したり(しかし母親に言っても助けてくれない)。
次々とひどい母親が描かれているが、救いは、それぞれ、娘が立ち直るまでを書いてあること。登場する娘たちは、文字通り、自分の心から毒親の影響を捨てて、本来あるべき自分・人生をとりもどす。
この本の後半は、実際のワークができる内容で、例えば、
母親に対しての嘘(自分が子供の頃信じていたこと)と真実を書き連ねていったり、
下記のような、母親への手紙を書いたりする。
あなたが私にしたこと。
そのときにわたしが感じたこと。
それがわたしの人生に与えた影響
わたしが今、あなたに望むこと。
最近、子どもの頃の記憶が大人になってからのその人の考え方や行動に大きく影響することがわかっている。
また、時々虐待による子供の怪我や死亡か報道されて、どうして子供が助けてと言えなかったかと思うが、この本を読むと、子ども本人からいかに声をあげることが難しいかがよくわかる。母ではなく自分が悪いと思っているから、助けを呼ぼうとは考えられないのだ。
周囲が気づくためのノウハウの共有が望まれる。