【書評】 社長が知らないITの真相 楠真 著 -今のIT事情を知ることが出来ます。

元々IT出身ではない、野村総合研究所の著者が、昨今のIT事情のみならずビジネスにありがちなプロジェクトの落とし穴などについて例を挙げてわかりやすく書いている。

IT以外の仕事に就いている人で、「私はITに強い」と思っている人は少ないのではないか。

「ITに弱い。でも、何とかしてついていかないと。」と思ってこの本を選んだのだが、ITだけでなく、むしろビジネスそのものについてのコンサルタントとしての鋭い指摘がとても面白かった。

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今のIT事情
「エコシステム」「クラウド」「クラウドネイティブ」「AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)」、「デジタルトランスフォーメーション」こういった言葉の意味が、この本を読み終わる時には簡単にイメージできるようになる。

例えば「エコシステム」。

本書では、日本企業の縦の関係の「ケーレツ」と反対の概念として取り上げている。

横のつながりを活用し、利害関係を越えて柔軟に手を組むやりかた。アップルのiPhoneにより、様々なApplicationを開発する企業があり、共存している。それを「エコシステム(生態系)」と呼ぶ。

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「ITは分かりにくい。良くわからない。」という社長。

「大丈夫です」と言ったじゃないか!
なぜこんな単純なトラブルが起きるんだ?
どうしてこんなに金がかかるんだ?

なぜそうなるのか?
それは、「現行機能保証によるシステム刷新」にある。

大抵の企業は、元々あるシステムに修正を加えたり、機能を追加したものを動かして、日々のビジネスを行っている。稼働しながらシステム移行、という作業は、ゼロから作るよりもはるかに難しく、時間とお金がかかる。

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ちゃんとヒアリングせずに、「〇〇本部長の御意向」と勝手に解釈する担当者。
これは、よく、「社長が言ったから」と急に余計な仕事を増やす人、実際に何度も見たことがある。ITも同じということか。

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システムの導入が目的になったしまい、導入後に何がしたいのかがハッキリしないプロジェクト。よくありそう。
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ITは、システムの導入の時にクローズアップされるが、ITのメインの仕事は日々のビジネスのサポートである。

そして、「悪夢」といわれるシステム障害はITの晴れ舞台、と言い切る。確かに、会社のトップと同様、業績好調な時はよく分からないが、うまくいかない時にこそ、手腕が試されるのは事実だ。

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表紙も地味、ページ数も多くて挫折するかと思いきや、とても面白く読んだ。

お勧めです。

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