橘玲さんの文庫『バカが多いのには理由がある』を読みました。この本は、2012年11月から2014年6月にかけて「週刊プレイボーイ」に連載されたものをベースにした本です。
橘玲さんの本は「言ってはいけない 残酷すぎる真実」も読んでいて、似たような不思議な読後感が残りました。
読後感が良いか悪いか?と聞かれたら返答に窮する本。「知らない方が幸せかも知れないが、知っておくべき」(いずれ知ることになるから)ということが書いてあります。
ヒトは生来『バカ』であることを知る
この本で言われている『バカ』は、「直感で理解出来る簡単なストーリーを私達が生来好む」ということを端的に表しています。
原始時代に身を守るために発達した「直感で理解」。これは簡単で疲れないため、多くの人が自然にその思考を使います。そのため、報道は「善悪」が分かりやすい単純なストーリーで語られることが多くなります。
しかし、私達が生きる現代は、「本当にそうなのか?」と考える「遅い思考」がないと真実が分からず、生き残れません。
私達ヒトは自然のままだと「直感」を使いたがる、そして世の中の情報はその「直感」に訴えるように加工されていて真実でないことがある、ということを知ること。
つまり、ヒトは生来『バカ』であることを知ること。
これが「バカ」から逃れる第一歩なのです。
日野皓正氏のビンタ騒動での報道は?
これを読んで、私は、「日野皓正氏のビンタ騒動」を思い出しました。
詳細は省きますが、先日あった、「世界的なジャズトランぺッター日野皓正氏が、その発表会で、指導していた中学生をビンタした」という動画付きの報道のことです。
友人の娘さんが3年間「日野皓正氏が指導するジャズ」のプロジェクトにお世話になったらしく、その時の話をFBにあげていました。
このプロジェクトは13年の歴史があり、日野皓正氏のボランタリーな活動でかつ「子どもだからこの程度でいいだろう」というようなものは一切ない、本気で指導してくれる素晴らしい活動だったらしいのです。
もちろん体罰は容認しないけれども、今まで沢山の子供に良い影響を与えてきた素晴らしい活動については取り上げず、この問題だけを取り上げる報道についての心の葛藤を書いていました。
「世界的な日野皓正氏が体罰」という単純な、しかもネガティブ*なストーリーが作られた結果、私達を引き付けてしまった例だと思います。
*報道にネガティブなものが多いのは、ヒトは生来、原始時代に自分を守る為に、ネガティブな情報に敏感になったから。
知りたくない真実が続々と
この本には、私達が「気分のいい嘘」として理解していたことを「不愉快な真実」に変えてしまう記述が沢山あります。
一例を挙げると、
「ブラック企業が生まれたのは、日本での正社員の既得権益から」
「フェアトレード商品は農民を貧しくしている」
「東大生の家庭の年収が多い」から導かれる「では教育の無償化を」は解決にならない
といった、不愉快な真実が突き付けられます。
特に、フェアトレードについては、かなりショックを受けました。
フェアトレードとは、コーヒーや紅茶やバナナなど、「発展途上国の人々をグローバル企業が搾取している」から「フェアトレード商品を買いましょう」という運動。
とても分かりやすいのですが、そう簡単には行っていないようです。
これは、この本に詳しいです。
何でも鵜呑みにしないことが大切なのだ
例えば、企業から多額の広告料を受取っている新聞やテレビの報道が、「お客様である企業」に対して自主規制が入るのは自然なことです。
また、最近話題になっている、「タバコ農家の票を沢山持っていたり、JTからの献金のある政治家が、飲食店全面禁煙ではなく、(科学的には全く効果がない)分煙を主張する」のも彼らの損得からしたら自然のことなのです。
結局、この本に書かれていることも含めて、「何でも鵜呑みにしない」で「疑って自分で多面的に考えてみる」ことが大切だと思いました。
「不愉快な真実」を知りたい方にお勧めです。