この本、沢山の文献に当たって、古代ローマでの奴隷について書かれている。
マルクス・シドニウス・ファルクスという架空の人物に語らせる形になっていて、面白い。
この内容は現代の私達への皮肉だろうか?
最初に、下記のようなことが述べられる。
「この本には人々を動かすためのヒントが散りばめられているので、あなたの評判が上がって多くの人間を動かすようになったとき助けになるだろうし、ひいては出世のための確かな権力基盤を築くことにもつながる」
「社会でリーダーシップを発揮したいと思っているなら、ぜひともこの本を参考にしてほしい。」
「主人とは、学んでなるものだ。家を切り盛りし奴隷を監督するには、より広い社会で指導者になるのと同じような能力が求められる」
ここで大抵の読者はハッとして、「この本は、古代ローマといいながら、現代の私達を皮肉っているのではなかろうか」と考える。
では、どんなことが書いてあるのか。いくつか紹介しよう。
奴隷を所有するのは見栄を張るためでもある。
(管理職同士の会話で「部下が何人か」を聞きあって、人数の多さを自慢する人をすぐに思い出してしまった。)
奴隷として一番いいのは家内出生奴隷(奴隷から生まれた奴隷)。
そのような奴隷はほかの暮らしを知らないから、過去を振り返って思い悩むことがない。
(日本企業の終身雇用制度を揶揄しているような・・・。)
買う時には、性格にも気を配るべき。
奴隷の仕事に向いているのは、極端に腰抜けでもなければ極端に勇ましくもないタイプ。
どうすればあなたのために懸命に働くか?
鞭は奴隷を疲弊するだけ。気前よく褒めてやること。いったん仕事を覚えたら、そこからは仕事に応じて必要な量の食事を与えればいい。必要以上に与えると怠け癖がつく。(はぁ、なるほど!)
奴隷の頭のなかには食事、仕事、罰、の三つしかない。
奴隷たちの行動をよく見て、その評価を食事の割当量に反映させること。いい働きをした者には、特別の褒美を与える。
(賞与や、減俸を連想してしまう。)
長期目標を持たせてやるのもいい。
一生懸命働けばいずれ自由になれるという希望をもたせる。
(働いている時の、昇給や昇格の淡い希望は否定できまい。)
上記はほんの一部であり、この後も示唆に富んだ内容が続く。
さて、この本、現在、Kildle unlimited対象であるが、東京・大手町(オフィス街)の紀伊国屋書店では、平積みされていた。
やはりこの本は、現代の私達への盛大な皮肉ではないだろうか・・・。