泰明小学校にアルマーニ。制服に大きな効果を期待するアイデアがつまらない。

泰明小学校にアルマーニ監修デザインの制服導入について。この「制服を導入することによって何かしらの大きな効果を期待する」というアイデアがとにかくつまらないなぁと感じています。

そして、高価な制服を買わなくても、無料で出来る取り組みについて、実例も交えてお伝えします。

制服導入による効果を期待するアイディアがつまらない理由

特徴のある制服導入は昔からある平凡な方法

つまらない理由の一つは、ブランドものの制服導入は、生徒あるいは学校を良くするために行われてきたものの1つでとても平凡な取り組みであることです。

例えば、学校を良くするあるいは生徒を集める手段として、以下のようなことが行なわれてきました。

  • 共学にする
  • スポーツで成果を上げて知名度を上げる
  • 特別クラスを作り、学費の減免を行って優秀な生徒を募集し、いい大学に入ったと言う実績を作る
  • ブランド物あるいはいいデザインの制服を導入する

そして、子どもが多かった30年以上も前から、ブランド物の制服を導入するという方法は既にありました。

ですから、学校を良くするために制服を導入するというのは目新しい施策ではなく、とても平凡なものです。しかも上に挙げた中で1番簡単。

というのも、学校は業者を選定する(つまり学校側はお客様)だけで、制服代つまりコストは生徒の親が負担だから。

私が高校生だった30年以上前にも、ブランド物の制服を取り入れた学校を知っています。(小学校ではなく高校ですが。)しかし、やはり制服だけではその学校を盛り上げることができなかったようで、現在も名が知れた学校ではありません。

制服導入よる効果について明確でないこと

校長先生から父兄への通知の全文がここにあります。

しかしそこからは、アルマーニの制服を導入することによる効果が、何を狙ったものかと言う目的がはっきりわかりません。

校長先生からの通知を読むと、「公共マナーを身に付けさせたい」あるいは、とってつけたような「服育」と「ビジュアルアイデンティティー」への言及があります。

まず、公共マナーを身につけさせることについては、制服を変えただけで身に付くとは思えず、また、そもそも、こういったしつけは家庭でなされるものです。もちろん学校と家庭と一体となるのが望ましいですが、「制服を変える」以外になされる学校の施策に言及されていません。

そして、校長先生は通知の中で、「ビジュアルアイデンティティーの育成は、これからの人材を育てることに不可欠である服育と言う重要な教育の一環である」と述べていますが、果たしてこの文言から、効果を理解できる父兄の方々がどれだけいるのか疑問です。

何万円もの費用がかかるのであれば、その効果、つまり「費用対効果」を説明することが必要です。
制服を導入することによる効果が何なのかがはっきりしません。

ではどうしたらいいのか?子供の力を信じる取り組み

では、学校という教育機関での話であることから、例えばこの校長先生の通知にある「服育」について、この学校はどのような取り組みをするべきでしょうか?

「服育」とは何か?

まず「服育」という教育についてこちらのサイトを参考にします。

「服育」とは

「与えられた衣服をただ着ると言うことではなく、むしろ、子供自身が良い素材を見分けて、TPOに合った、自分を表現する手段として、自ら衣服を選んでいく力をつけること」

が私の理解です。

であれば、高いブランド物の服を買って与えるのではない、違う「服育」の方法はないでしょうか?

杉並区立和泉学園小中学校の例

例えば、杉並区立和泉学園小中学校で10年以上続いている取り組みを見てみましょう。

それは近隣の事業者の協力を得て、小学校3年生の子供たちが地域のお店で就業体験をすると言う「弟子入り」と言う取り組みです。

小学校3年生なので、実際には弟子といっても仕事はさわり程度でしょうが、現在では34事業者が参加し、子供たちに仕事の経験をさせています。

これは、当初、学校の先生方が地元の事業者に、子供の受け入れを「営業」して回ったからこそ実現したものです。

子供がお世話になったからという理由で親御さんがそこのお店で買い物をしたり飲食をしたりといった経済効果も多少はあるでしょう。そして面倒を見た子供たちがたまに訪れて成長していく姿を見るのも楽しいようです。

もちろんこの取り組みは事業者の方たちの協力で行っており、学校・生徒のコストはゼロ。

ヤマト運輸の取り組み

学校側だけではありません。事業者で、社員を学校に派遣して社会貢献している企業もあります。
ヤマト運輸は、小学校に社員を派遣して、交通安全を教えています。
こちらも、学校・生徒のコストはゼロ。

銀座での「服育」

では、銀座の泰明小学校では何が出来るでしょう?

「服育」やビジュアルアイデンティティーを教えたいのであれば、むしろ制服をやめ、私服にしてはどうでしょう。そして、子供たちに自分たちで洋服を選ぶ力をつけさせるのです。

そのために、銀座にあるブランド企業にそれこそお願いをして、そこから「服育」のために、社員を派遣して服の選び方を子供に教えてもらうといった取り組みが出来るのではないでしょうか。

洋服は、日本ではまだ歴史が浅いので、イタリアやフランスのブランド企業に依頼する。銀座には呉服店もありますから、和服について教えてもらうのもありですね。

私が銀座の服飾会社の社員でしたら、手弁当でいいから子供たちに会いに行きたいと思うでしょう。

会社が無償で人を派遣するわけはないって?実際、ヤマト運輸は派遣していますし、和泉学園小中学校では実現できているのです。

二番煎じにはなりますが、「前例」があれば理解も得られやすいでしょうし、和泉学園小中学校にアドバイスをもらいにいけば、難易度も下がります。

最後に

「馬子にも衣装」と言う言葉があるように、そして「人は見た目が9割」というベストセラー本があるように、洋服に注意を払うのは重要ではあります。しかし制服をブランドものにしたからといって子どもが簡単に変わるものだとは思えません。

それにしても、制服を変えることによって生徒が変わるだろうという効果を期待するのは、つまらないアイデアでした。

「時間がかかった」と校長先生はインタビューでおっしゃっていますが、「業者選定」のお客様の立場では、大変だったとは思えません。

むしろ、それを受けたアルマーニ側は大変だったでしょう。そしてアルマーニはビジネスとして受けているので、制服がそれらを回収する金額になるのは仕方ないといえます。

先にあげた、和泉学園小中学校の例。導入時の学校の先生は受け入れ事業者の開拓にさぞかし大変だったと思いますが、「弟子入り」の取り組みが10年以上も続いていることに感銘を受けます。

学校の先生は、子どもの面倒を見て給与を得ているので、意外と子どもの力に気づいていないのではないでしょうか。長期的なビジネスの目論見も否定はしませんが、子どもって、「無料でもいい」と大人に思わせる力を持っているのです。

Photo by Feliphe Schiarolli on Unsplash

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