ドイツ人に言ってはいけない趣味っていうのがあるんです。それは、日本人ではよくある「食べ歩き」です。
ドイツ赴任前、ドイツ語の先生からのアドバイス
ドイツ赴任前に、日本人の奥さんを持つドイツ語の先生から色々なアドバイスをもらいました。その中の一つ。
時々日本人に趣味を聞くけれど、「趣味は食べ歩き」というのはドイツ人には理解出来ません。ですからもしもそうでも、その趣味は言わない方がいいですよ。
理由はおそらく食文化の違いだと思います。
ドイツ人の食べ物に関する私の経験
飲食店に並びたくない?ドイツ人研修生が顔色を変えて議論に
会社に来ていたドイツ人研修生。日本語の出来る優しい感じの男性だったのでつい油断してしまいました。
「日本に来たらカウンターでお寿司を食べたいでしょう?一般的に、お寿司屋さんで飲み食いしたらとっても高い。でも、安くて美味しいところを知っているから教えてあげる。」
彼は喜んで身を乗り出して来ました。
「小田急線の梅ヶ丘駅にある、美登利寿司というお寿司屋さん。
ただ、30分くらい待つと思うけど・・。」
ここで、彼の顔色が変わりました。
「30分!?そんなに待つくらいだったら、近くの空いているどこかの食堂でゆっくり食べたらいいでしょう。」と頭を左右に振りながら激しく言って、ため息までつきました。
明らかに「信じられない。食べ物のために30分も待つのは馬鹿。」と言わんばかりの様子。
「待ってもいいから美味しいものを食べたい。」という感覚は理解してもらえないようでした。
ドイツ人を連れて行ってはいけない料理は?懐石料理
日本通のドイツ人に言われたことがあります。
来日したドイツ人をもてなすには、しゃぶしゃぶ・すき焼き・焼き鳥など、はっきりした味のものに連れていくこと。
懐石料理のコースなどは、だしを効かせてあって薄味。ドイツ人には味がわからず、量も少ないので食べた気がしない。高価だということも分からないのでやめた方がいい、と。
そういえば、「何で日本人は、生魚を食べるの?ヘルシーだから?」と聞かれて返答に困ったことが。
ドイツでドイツ料理店に行くとわかるのですが、だし・こくがなく、塩味が強くて日本人には辛いです。味覚が違うように思います。
食べ慣れないものは食べないドイツ人
私は東京に住んでいるのですが、東京には世界各国のレストランがあります。
また、海外旅行に行くと、そこの名物料理を食べたい日本人は多いでしょう。
日本人は、「ちょっと変わったものが食べてみたい」という「山っ気」があるんですよね。
でも、会社で日本に来たドイツ人に食べ物について聞くと、「魚介類は嫌い」だと言われる頻度が高い。
日本人だったら、「せっかくだからお寿司」と思うところですが、「日本はお魚が新鮮だっていうから食べてみよう。」とは思わない。
ドイツ人は、日本人よりも、食べ慣れないものは食べたくない人が多いと感じます。
夜はkaltes Essen 火を使わない食べ物を食べる
では、ドイツ人は、いつもは何を食べているのでしょうか?
朝はパンやシリアル・ヨーグルト・果物など。
昼は会社の食堂で、肉や魚などのメインのあるもの、あるいはパスタなど。
ここまでは想像できると思いますが、違うのは夕食。
夕食は、kaltes Essen、英語で言うとcold meal 冷たい食べ物、を食べます。これは、冷やしてあるという意味ではなく、火を使わない、料理をしない、という意味。
具体的には、どっしりした薄切りのパンに、ハムやチーズを挟んだサンドイッチ。
仕事をして帰って来て、夕食がそれでは侘しい・・・と思うのは、私が日本人だからでしょうか。
食べ物はガソリンのようなもの?
ここまでドイツ人と食べ物について書きました。
- 美味しい食べ物のために待つのはイヤ。
- だしの味よりははっきりした味を好む。
- 食べ慣れないものは食べたくない。
- 夕食はサンドイッチ。
「食べ物に興味がある」ということは、日本人にとっては普通。
でもドイツ人にとっては違うようです。おそらく、ドイツ人にとっては、日々の食事はガソリンのようなもの。
私が勤めていたドイツ系の会社では、「現地でドイツ人にいいレストランを聞くな」と言われていました。美味しいところではなく、量が多いところになってしまうからです。
ドイツ人にとって、はっきり味のわかるものは「食べた」感があって満足しますし、「食べたことがないものは面白い経験」ではない。食べ慣れたものをたくさん食べるのがいいのじゃないかな。
私はドイツ赴任中、ドイツとフランスの国境近くに住んでいました。
よく話題にのぼったお隣のフランスのことを「フランス人は食べ物に興味があるから」と言う時のドイツ人はちょっとフランスを下に見ているように聞こえました。
あなたの趣味が「食べ歩き」だったら。
ドイツ人には言わない方がいいかもしれません。
Photo credit: Traveller_40 via Visualhunt / CC BY-NC-ND