久しぶりに小説の書評を。悪女って持って生まれた資質で、意図せず男性を引き寄せる人なのだ、と思いました。
「アッコちゃん」はきっと有名人
自分の書く小説に、「女文士」「白蓮れんれん」などのキャッチーな題名をつける作家の林真理子さん。でも、女優、浅丘ルリ子さんについて描いた本は「RURIKO」と名前をローマ字にしただけのインパクトのある題名。
「ルリ子」と言えば、浅丘ルリ子さんだとわかるほどの有名人だからでしょう。
そして、その林さんがこの本に「アッコちゃんの時代」というタイトルをつけた。ということは、「アッコちゃん」はバブル当時を知っている人にとって、聞いただけで「ああ、あの……」とわかる有名人に違いありません。
調べて見たら、「この人に違いない」という美しいロングヘアの女性を見つけました。女性誌にも「小悪魔」として何度か登場していたみたいで、やはり有名人なのですね。
いつの時代も悪女は人の興味を引く
先日テレビドラマの「黒革の手帳」が終わりました。武井咲さん主演の悪女を描いたもので、視聴率を稼いで大成功だったらしいです。
この本の「アッコちゃん」も、バブル期に、「2人のお金持ちの有名人の男性を手玉に取った魔性の女」と言われ、だからこそ、当時、世間の耳目を集めたのでしょう。
いつの時代も悪女は人の興味を引くのです。
魔性の女の素顔に迫る
この本は、「アッコちゃん」本人の独白の形で綴られています。
ストーリーは、ある日突然、出版社の女性社員が、
「ある作家があなたの過去について小説を書きたがっているから会ってほしい」
と、すでに中学生の子どもがいるアッコちゃんを訪ねて来るところからが始まります。
魔性の女というと、男性を騙してお金を巻き上げるためにいろいろ考えていそう。しかし、この本での「アッコちゃん」は、美女ではあるものの、「お金をとろうなんて思わなかったし、なんとなくそうなってしまった」と書いています。人から悪女と言われるけれども「自分では何でそう言われるのかわからない」と。
20歳の学生の時、父親くらいの歳の当時地上げで名を馳せた「最上興産」の社長の愛人と言われ、その後、女優の風吹ジュンさんの夫をとったという「アッコちゃん」。
しかし、「アッコちゃん」が特別だったわけではなく、バブルという時代と、話題の中心だった六本木や西麻布という場所、そして美女で愛嬌のある一人の女性がたまたま重なったから、こういうことになったのでは?
と読者に思わせる内容。
魔性の女の素顔に迫っています。
私の知ってるバブルとは?
私は、バブルについては「こういうことがあったよ」という面白い経験がありません。多分、いわゆる「美味しい思い」をしたのは、会社で当時管理職だった方々や、実業家や、モデルなどの美しい女性たちなんだと思います。
好景気とは言っても、女性差別が激しくて就職も転職も難航したし、当時ペイペイだった私は、手当はちゃんと出たものの、連日雑用で朝早くから夜遅くまで残業していました。
唯一良かったのは、22時過ぎると、女性スタッフに限り、電車がある時間でもタクシー代が会社から出たことでしょうか。
私がせっせと働いていた時間に、六本木や西麻布の喧騒の中で遊んでいた人達がいたんだなぁと想像するだけです。
週刊誌も読まなかったので、「アッコちゃん」も地上げで名を成した「最上興産」の社長も知りません。とはいえ、当時成人していて、バブルの雰囲気はわかるから、やっぱり興味がわきますね。
やっぱり悪女は生まれつきなのだ
この本、「アッコちゃん」が手練手管を使って男性を引き寄せる悪女ではなく、普通の女性のように描いていますが、思うに、「だからこそ」魔性の女なのでは。
「意図せず自然に、男性を引き寄せてしまう」っていうのがまさに。
不動産王の愛人の時も、もらったのはショパールの時計といくばくかの株だけで、お金目当てではなく、「私が責められるのは何で?とにかく積極的にきたのは男性で、自分から近づいたわけではない」というセリフ。
やっぱり悪女の資質って生まれつき、持って生まれたものなのですよ。
「悪女って、こういう人なの?」と読むのも楽しいし、バブル経済当時の様子を知る一端にもなると思います。
尚、悪女と言えば、有吉佐和子さんの「悪女について」も面白いです。