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雪かきと言えば思い出す。ドイツの恐ろしい慣習『Kehrwoche』

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赴任した南ドイツの『Kehrwoche』という慣習。
とてもストレスでした。
「これで心労から解放される!」と日本に帰国するのが嬉しかった理由の一つです。

「家の前の掃き掃除」という日本のマナー。

私が子どもの頃、お手伝いの定番と言えば、家の前の歩道を掃くことでした。お隣が旅行などでいない時は、お隣の前も。
これは義務ではなく「マナー」。
実際、大人になってからは、家の前を掃かなくても誰も咎めませんでしたし、東京では雪の日に雪かきしてあるところがむしろ少ないくらい。
しかしこれが、近所の人達が監視するほどの義務だったとしたら?

『Kehrwoche』という慣習とは?

Kehrwocheという言葉。カタカナで表記するなら「ケアボヘ」。kehrenは英語はsweepで日本語では掃くという意味、wocheは英語はweekで日本語では週という意味。
そもそもは「最低でも週に一度、家の前の通路を掃除する」という南ドイツの一部、Schwaebischと言われる地方に存在した法律。守らなければ5~1,000マルクの罰金がありました。
1988年に、「週に一度」が「必要な時のみ」に変更されたのですが、どうも「週に一度」の慣習としてそのまま今でも残ってしまったようなのです。

『Kehrwoche』とは具体的に何をするのか?

では、Kehrwocheとは何か。私の住んでいたアパートを例にしましょう。

当番制である
6世帯が入っていた私のアパート。週に一度の交替制なので、当番が回ってくるのは、6週間に1度です。日曜日、家のドアの横の釘に、当番の札がかけられたら、翌週はあなたの番、ということ。
作業するのは、生ごみの収集日にあたる水曜日と、土曜日の午前中、そして雪が降った日。

説明は、大家さんからみっちりと
掃除の場所や道具の使い方については、大家さんからみっちりと説明がありました。家庭にある「モップを洗って絞るバケツ」は学校以外で初めて見ました。

水曜日の作業は生ごみ入れの掃除
水曜日の作業は、生ごみ入れの掃除です。
生ごみの収集が水曜日の8時15分くらい。収集後、大きい生ごみ入れを裏庭に引いて行きます。そして、裏庭で、ホースの水で中を洗って戻しておきます。

キャスターが2つ付いていて中は空なので、作業自体はそれほど大変ではありませんが、ごみ収集の後の作業となるので、会社に「当日はKehrwocheなので出社が少し遅れる」旨を連絡していました。

また、この作業は春から夏のみで、冬は不要です。生ごみは臭うので、この作業があるようです。

土曜日の作業は家周りの掃除
土曜日は、家周りの掃除です。頑張っても40分はかかります。尚、日曜日はキリスト教の安息日のため、掃除は出来ません。

  • 3軒分の靴ふきマットの掃除
    ドイツは土足なので、ドアの前にはタワシのような材質の靴拭きのマットがあります。自分の家、お隣の家、そして地下の家の3枚のマットを外に出し、叩いて土埃を落とします。
  • 階段と廊下を掃く、拭く
    アパート内、私の担当は、2階の階段の始まりから、私の部屋のある1階の踊り場。地下への階段と、地下の部屋の踊り場。それから地下にある物置内の通路。
    ほうきで掃いてから、水で絞ったモップで拭きます。
  • 外を掃く
    アパートのドアの前から入口までの通路、それからアパート前の歩道を掃きます。
  • 雪の日の作業は雪かき
    担当の週に雪が降ったら、朝8時までに、歩道の雪かきをしなければなりません。雪の量にもよりますが、最低1時間はかかります。
    雪かきをしないで歩道で誰かがころんでけがをしたら、それはKehrwoche担当者の責任です。

誤魔化せる?いや、皆が見ています。

それほど汚れていないところの掃除。サボってもわからない気がしますが……。

ある日私の当番の掃除が終ったあとのこと。
同じアパートに住む奥さんが、私を外に連れて行き、車道の隅の落ち葉を指さして、「ここもきれいにしてね。」と。
彼女は、私が土曜の朝に疲れて寝てしまい掃除が出来ず、代わりに月曜日の早朝にやったことも知っていました。
アジア人だと特に目立つので、私のドアに担当の札がかかると皆が注目するようなのです。

それから私は、当番の時は、必ず土曜日の朝7時半には掃除を始めるようにしました。というのも、近所の当番の人が皆、その時間に外で掃除していて挨拶し合うから。
「私、ちゃんとやってますよ~!」というアピールになるのです。

困ったのは冬の雪かき。

6週間に1回のお掃除当番は、それほど負担ではありません。
しかし、冬の雪かきは、「誰かが転んでけがをしたら、その歩道の担当の家主がその責任を負う」という決まりなので心の負担がありました。
しかも、朝の8時までに終了していなければなりません。ということは、朝起きてから気づくのでは遅いのです。
担当の週は、毎日翌日の天気予報をチェックして、雪が降りそうな時は早起きしました。

旅行などで不在の時は、お隣に代わってもらうことも出来ます。でも、順番を変えるのも頼むのも面倒。
一度、スキー旅行に行く週に、当番になってしまいました。
普通はスキー場の雪の天気予報を調べるところ、私は自宅の雪の予報を何度もチェック。しかもかなり真剣に。ジョークのような状況で、心底この慣習が嫌いになったのでした。

ドイツ人はどう思っているのか?

お掃除当番、Kehrwoche。実は住民もこの慣習を好んでいるわけではありません。
「Kehrwocheを代わってあげると雪が降る」というマーフィーの法則のようなジョークがあるほど。
また、ドイツ内でも「ドイツ人は汚れると掃除をする。Schwaebisch (その地方の人)はKehrwocheだから掃除する。」というこの地方の慣習を揶揄する言葉もあるそう。
掃除を喜んでするわけではない。でも彼らはきれい好き。仕方がない、と受け入れているのでしょう。

「もうすぐ帰国だね。寂しい?」とドイツ人の同僚に聞かれ、「Kehrwoche, nicht mehr! (もうKehrwocheはなし!)」と笑って答えると、彼も大笑い。やはり好きではないようでした。

ドイツの街はとてもきれい。日本もそうしたい?

私は今、東京に住んでいます。東京に雪が降っても、歩道を雪かきしない家が多くて歩くのが大変です。また、お店の前やマンションの前はきれいに掃除されていますが、それ以外の歩道はきれいだったりそうでなかったりします。

ドイツの街はとてもきれい。
掃除をすること以外でも、「道側の雨戸は毎日全部開けなさい」と注意されたことがありました。住民は美観に注意を払っているのです。
日本人に人気のローテンブルグに行った時、植栽に花がら一つなかったのには驚きましたが、その徹底ぶりは観光地だけではありません。

誰でもきれいな街は好き。しかしそれには税金にしろ、個人の労働にしろ、対価が必要です。
雪と言えば思い出す、ドイツの恐ろしい慣習『Kehrwoche』のお話でした。

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Photo credit: Growing a Green Family via Visualhunt.com / CC BY-SA

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