ずいぶん前のことになるが、ドイツに赴任している時のこと。
本社には大きい工場もあるため、従業員の95%くらいは男性。そして、5%の女性の殆どがいわゆる西洋人(いわゆる白人)。
敷地は大きく、私が働く棟から食堂まで徒歩10分くらいかかる。サンドイッチなどが買える購買があるが、そこも徒歩8分くらいで近くない。
日本の職場では、ランチは友達と行ったり一人で行ったり席で食べたりしていた。
しかし、ここのカルチャーは、「ネットワーキング」と称して、皆必死に色々な人とランチの約束を事前にとりつけていて、突然その日に一緒にランチに行ける人はいない。
食堂までのルートには工場の前もあり、機械工の男性たちが日向ぼっこをしているのだが、スーツ姿の私が通ると視線が追うのがわかる。前に町で言われた、差別的な言葉とか言われたら、どうしよう。そこを一人で歩きたくない。
食堂では女性というだけで目立つ上に、アジア人はいないので、じろじろ見られる気がする。そこで一人ぼっちで食べるのは・・・。
そんなこんなで、すっかり「一人ランチ恐怖症」になってしまい、同僚に相談したところ、返って来た返事がタイトルである。
「だいじょうぶ、誰もあなたのこと、そんなに見てないから」(爆)
そうか!そうだ!
日本人は、「人からどう思われるか」を欧米人より気にするって、こういうこと。
そして、日本は共通の約束事(立ち居振る舞い)が多いため、「人のことも、(期待したふるまいをするかどうか)無意識によく見ている」のだ。
同僚は真面目に言ってくれたのだが、それを聞いて以来、私は何だか自分が可笑しくなった。
よく考えたら、3人以上でランチに行くと、最初は英語で話してくれていた人達がいつの間にかドイツ語になることがよくあり、ネイティブの速さではついて行けず、決して楽しいばかりではないことにも気づいた。
そして、ランチの約束のない時には、家からおにぎりを持って来て昼休みの席で食べたり、一人で食堂にも行って、ランチ恐怖症から逃れたのだった。
さて、南ドイツの寒い冬にはサウナがつきものだが、ほぼ、混浴である。
私はびっくりしたのだが、「あなただけでなく、みんな裸だし、見慣れてるから誰も見ないわよ」と同僚の女性に言われて、「あ、また、私の日本人の悪いクセが・・・」と反省した。
そして、バーデンバーデンという温泉地があって、そこに行った時のこと。
入口は男女分かれている。タオルを巻いていたのだが、途中で係のおばさんに取られてしまった。「湯治」のための施設なので、熱い湯があったり、水風呂があったり、サウナがあったりと順番が決まっている。
そして、最後の大きなプールのようなお風呂、薬草が入っているところだけ、なぜか混浴。ドアについた小さいガラス窓から見たら、男性も沢山いる。
「見慣れてるから誰も見ない」という同僚の言葉を信じてドアを開けて入ろうとしたのだが・・・。
プールに見えていた、沢山の男性の頭が一斉にこちらを見た。ざぶんと入ってしまえばこっちのもんだと思っていたのだが、え!!!み、見てる!
多分、彼らは、西洋人女性の裸は見慣れているから見ないのであるが、アジア人女性は見慣れていなかったのである。
自分は人から見られているのかそうでないのか。適度な「自意識」はどこなのか。それは、時代や場所、状況によって変わるもので、特に外国ではなかなかわからない。
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