【書評】『投資レジェンドが教えるヤバい会社』藤野英人著 結局、真っ当な会社の株価が上がる。

藤野英人氏の「儲かる会社、つぶれる会社の法則」を大幅に加筆・修正して文庫化した本『投資レジェンドが教えるヤバい会社』を読みました。

株価の上がる会社・上がらない会社の面白い共通点が書かれているのですが、結局、「真っ当な社長・会社の株価が上がる」ということだと思いました。

著者はどんな人?

著者は独立系投資信託ファンド、ひふみ投信の最高投資責任者の藤野英人氏。

ひふみ投信はR&Iファンド大賞をダブル受賞しており、大きいリターンの実績がある優秀な投信。中小企業株を中心に投資しているファンドです。

著者がなぜこんな本を書けるのか?

ファンドマネージャーというと、PCに向かって株価のグラフを分析しているイメージ。
藤野氏はなぜこんな内容の本が書けるのでしょうか。

それは藤野氏の投資スタイルが、直接会社を訪問して社長に話を聞く、現場主義で投資対象を決めているから。

社長や会社を訪問した時に見聞きしたことや、会社のホームページの特徴なども調べ抜いて投資するのです。
ファンドマネージャーは、結果がハッキリ数字で出る、まさに実力主義の仕事。

真剣に大量の会社を見て、企業の本質を見抜いているから、このような本が書けるのです。

いい会社、ダメな会社の共通点

藤野氏は、いい会社、ダメな会社にはそれぞれ共通点があると言います。
では、藤野氏はどのような共通点を見いだしたのでしょうか?いくつかご紹介します。

社内でスリッパに履き替える会社

社内でスリッパに履き替える会社の株は上がらない。

これは、例えば豪雪地域で雪を払う必要があるとか、精密機械の工場と隣接していて外からホコリを持ち込まない、といった合理的な理由がある場合は除きます。

合理的な理由もなく、会社をあたかも我が家のようにしているオーナー企業はダメ。

藤野氏の「合理的な理由があるか」は、本書で別に挙げている「社員に体操を強制する会社に投資しても儲からない」にも当てはまります。

サラリーマン社長の会社

サラリーマン社長の会社の株は上がらない。

短い任期を評価されるサラリーマン社長。サラリーマン社長は自分の任期を無傷で全うしたいがために、問題を先送りしがち。日本では、トヨタなどのオーナー社長が否定的に見られますが、オーナー社長の方が長期的な視野でかつ「自分ごと」として会社を見ているので投資対象としていい会社。

「サラリーマン社長」、別に挙げている「役員が多すぎる、相談役や顧問がいる会社の株は上がらない」は、今、問題を抱えている日本の大企業に共通する特徴です。

会社ウェブサイトに社長や役員の写真がない

会社ウェブサイトに社長や役員の写真がない会社の株は上がらない。

会社のウェブサイトに役員の顔写真を載せない。
「面が割れると困る」というのは、何か後ろめたいことをしているからかもしれません。投資先を決めるにあたり、重要なファクターのようです。

最後に

「会社の本質は、細部から見える。」の言葉でこの本は始まります。

スリッパや、ラジオ体操や、ウェブサイトの顔写真。
細かいところに、社長ひいては会社が、何事も「考え抜いて」会社を運営しているかどうかが現れています。

つまり、事象の数々は、一見「え?」と思う事ですが、内容を読むと「なるほど、真っ当な会社はこうだよね」と簡単に理解出来ること。
「真っ当な会社の株は上がる」のだと思いました。

本の帯に「この企業は買い?売り?」とありますが、投資判断に使えそうな本ではありません。
この本に取り上げられていることの多くは、投資対象の会社に自ら足を運ばないとわからないことだからです。

しかし、オーナー社長の人も、サラリーマン役員の人も、そして会社員の人も、自分の会社にあてはめてみると面白くてキビシイ内容が盛りだくさん。

ネタとして、または自分自身あるいは会社が「真っ当かどうか」振り返る機会として、読んでみることをおすすめします。

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