ドイツ人と言えば、「勤勉な人」を思い浮べるでしょうか?いいえ、私は、ドイツ人と言えば「散歩好き」だと思います。
どうして「散歩に行く」spazieren gehenを最初に習うのか?
私がドイツ語の学習で使った教科書は、日本人用ではなく、ドイツで使われている外国人用のもの。
「この教科書、変じゃない?」と思って先生に質問したのは、「話す」「食べる」「聞く」などの何語でも良く使用する動詞と一緒に「散歩に行く」という動詞が出て来たから。
「先生、日本で『散歩に行く』のは犬かお年寄り。こんな単語、使うのでしょうか?どうしてこれが基礎にあるの?」と私。先生はそれに答えて、「ドイツでは、犬や老人だけでなく、若い人達も散歩します。」
私は、その時は良く理解出来なかったのですが、ドイツに赴任して本当の意味を思い知りました。
休日に友人を招待した時も食事の後は散歩。
ドイツにいた時は、広いアパートに住んでいたので良く友人を招きました。食事の後、外がまだ明るいうちは、誰かが「じゃあ、ちょっと外を散歩しよう。」と言い出します。そして近所を散歩。
住宅地を抜けてすぐ、馬のいる牧場やキャベツ畑が広がっていて、野生のリスやウサギもいました。自然の中を歩くのはとても気持ちが良かったのですが、驚いたのは、散歩しているのが私達だけではなかったこと。
近隣の住民たちが、老いも若きも犬も散歩していて、すれ違うと挨拶し合うのです。
ランチの後に散歩、多少の雨、雪は関係なく散歩。
ドイツで同僚とランチに行った後も、必ず誰かが「じゃあ、ちょっと散歩に行こうか?」と言い出し、同僚と15分くらい、会社の敷地内を歩き回りました。
夏の気候の良い時ならわかるのですが、土砂降りの時を除き、気候に関係なく彼らは散歩をしたがります。
冬は気温が零下になり、ひどい時にはマイナス7度という時もありましたが、それでも同僚と社員食堂でのランチ後に散歩。他の人はそのまま歩いていましたが、スーツでは寒すぎるので、私だけは毎回食堂へコートを持参していました。
とは言ってもやはり彼らも寒いので、4~5人で縦に並んで無言で歩きます。まるで厳寒の中の行軍のよう。
彼らは、「食後に散歩すると消化にいい」と言っています。そう、「健康のため」に歩くようなのですが、私は最後までその感覚に慣れませんでした。
日本では、むしろ「消化を助けるために食後は動かない方がいい」と言われているのとは対照的ですよね。
ドイツ赴任中に同僚と一緒にした厳寒の中での散歩、忘れません。
ホテルの周辺の道。初めて来たのに知っている理由は散歩。
初来日のドイツ人のグループ。到着した日の翌日の夜、夕食会がありました。夕食後、レストランからホテルまでは歩いて20分ほどの距離。
道が分かりにくいので、私は彼らをホテルまで送って行きました。するとせっかく送って行ったのに、彼らが私を「駅まで送る」と言い出しました。「あなたたちが使っていない駅だから」と断ると、彼らは「今朝、散歩したからどこにあるか知っているから大丈夫。」と答えるではありませんか。
時差をものともせずに仕事の前に早起きして散歩していたことを知り、「やっぱりこの人達は散歩好きなのだ」と改めて思ったのでした。
散歩好きのドイツ人。では日本人は?
20~30分なら、歩くのは何とも思わないドイツ人。以前勤めていた外資の日本法人から繁華街の東京の六本木まではタクシーで10分ぐらい。道が混んでいるので、歩くと20分くらいの距離です。
夕食会があると、大抵「タクシーに分乗しよう」とこちらから提案するのですが、必ず「いやいや、歩けるよ」というドイツ人からの返事、そして「いえいえタクシーで」と再度言って結局タクシーに乗る、というやりとりがありました。
その時に、ドイツ人が「にやっ」と笑った事があるのでその理由を聞いてみると、「日本人はタクシーが好き」ということが、来日したことのある同僚の間で言われていて有名らしく、「やっぱり聞いた通りだった」から笑ってしまったとのこと。
「いやいや、あなた達が、歩くのが好きなんでしょ。」とお返ししたいところでした。
散歩好きなドイツ人は山登りも好き。
日本への出張が土日を挟む場合、週末の観光案内も引き受けるのが普通でした。そして、よく頼まれたのが「富士山に登りたい」という希望。しかし、日本人の若手の元気なスタッフでも、富士登山にお付き合いしたい人はほとんどおらず、人選が大変。
ドイツ人は、平坦な場所を歩くのが好きなだけでなく、山登りも好きなのです。
やっぱりドイツ人は散歩が好き。
健康のためなのか、それが習慣になっているのか。
ドイツ人は自然があろうがなかろうが、平坦だろうが山だろうが、若いうちから外を歩くのが大好きなのです。
「散歩に行く」という単語がドイツ語の基礎の教科書に出て来たのは、「良く使われる動詞だから」。
ドイツ人と一緒に行動する機会があったら、歩きやすい靴や、サンダルならビルケンシュトックを履いて行きましょう。さっそく「散歩に行こう」と誘われるかも知れませんよ。
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