以前勤めていた職場には、外国人の研修生が来ることがありました。その際、私が必ず最初に聞いていたこと2つ。
「日本語と英語、どちらで話したいですか?」
そして答えが日本語の場合は、
「日本語の間違いを直して欲しいですか?」
これを聞くということは、ドイツ赴任の時に学んだことなのです。
職場で「使う言語」と「ドイツ語を直してほしいか?」を聞かれる
ドイツに赴任して、挨拶の後、同僚から最初に聞かれたこと。
「ドイツ語と英語、どちらで話したいですか?」
これは、ドイツ人だけでなく、アメリカ人にも中国人にもギリシャ人にも聞かれました。
(部署の外国人は、全員ドイツ語が堪能でした。)
そして、私が「ドイツ語で。」と答えると、同僚がドイツ人の場合はもう一つの質問。
「ドイツ語を直して欲しいですか?」
一人ではなくほぼ全員から同じように聞かれたので、心に残っていたのです。
日本ではどうしていたか
それまで、日本で外国人の研修生が来ても、私を含め誰もそんな質問はしませんでした。
「このレベルだと日本語の会議は無理だよね」とか、逆に「この会議は英語が苦手な人がいるから日本語で」、などとその時々でこちらで考えていたのです。
仕事場なので、一番効率の良い方法で行くのが当然、という考えもあったかも知れません。
日本人らしいと言えばそうなのですが。
いちいち聞くのはなぜ?「個人はそれぞれ違う」という考えがあるから
ドイツであまりに皆から聞かれるので、同僚に理由を聞いてみました。
「だって、あなたが何語で話したいか、聞かないと分からないでしょう。ドイツ語を直すかどうかも、『とにかくトライしたいからいちいち直して欲しくない』という人もいるから。」
という答え。
「ドイツ語は、私のレベルで行けるかどうか、その時々で判断してください」「ドイツ語を間違ったら直して欲しいに決まっています」と無意識に思っていた私。
自分の希望を聞かれるなんて思ってもみなかったので、「うんうん、聞かないと分からないよね。」と妙に納得し、「そうか、この人達は、私の希望を尊重してそれに合わせてくれようとしているんだ!」と気づいたのです。
「聞かないと分からない」「言わないと分からない」
ドイツにいた時に、感じたこと。
それは、人々のベースに「聞かないと分からない」「言わないと分からない」という考えがあることです。
聞かないとわからない
言語のこと以外でもあります。
例えば、仕事の後や休日に同僚と出かけた時。地元に不案内な私としては、正直何でも面白い。しかし、いちいち答えるのが面倒なくらい私の希望をものすごく聞かれました。
言わないとわからない
逆に、分かってもらおうという努力も半端ない。ドイツ人の説明は長いです。
例えば日本で、会議で日本人の偉い人が一言二言だけ話して、周囲が意味を推し量る、みたいなことが時々あります。
しかし、ドイツの職場では、その人の職位にかかわらず、とても長くしゃべります。当初は正直、「少しうるさいな」と思っていたのですが、そのうち、考えを変えました。
いろいろ聞いていると、分からない部分のパズルが少しずつ埋まって行き、誤解が減って行くことに気づいたからです。
相手のことは「聞かないと分からない」「言わないと分からない」。書いてみると当然のことなのですが、島国で暗黙の決まり事や認識が多い日本とはかなり違います。
「個人は違う」を意識すると個人を尊重するようになる
外国人研修生には「使う言語と日本語を直してほしいか」を聞く。
日常の端的な、とても小さい事ですが、この一言で、「相手を尊重している」ことになります。
仕事の事情で、例えば時間がないから英語で(日本語で)、と研修生の希望に沿わないことももちろんありました。その場合は、「これこれの事情なので、この言語にします。」と伝えていました。
そう、私がどう思って研修生の意思と違う言語にするのか、「言わないと」わからないから。彼らは、理解できないことがあると「どうして?」と聞きに来ます。
正直、察してくれる、あるいは自然と受け入れてくれる日本人のほうがやりやすいと思わないでもないですが、これが「クローバルスタンダード」。言語のこと以外でも、「聞く」ことと「言う」ことに気を付けていくしかありません。
いいこともあります。
「個人は違う」を思うと、結果的に他人だけでなく、自分という個人をも尊重するようになること。
今までは、何も考えずに周囲の人に合わせていた物事について、「自分はどうしたいんだろう?」と考えるようになります。自分も尊重されたいですよね。
ですから、今後も私は、外国人に対して「相手に聞く」ことと「言う」ことは意識して続けていくつもりです。
端的な小さいことですが・・
外国人研修生には「使う言語と日本語を直してほしいか」を聞きましょう。
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