マタギなど、山の近くに住む人々に取材して集めた、山里での不思議な出来事をとりあげた本。ちょっと怖いけれど、興味をそそるのは、たったの50年程度前の話だから。
そして、この本を読んで思い出した、祖母から聞いた「狐・狸や不思議な物の怪(もののけ)の話」もお伝えします。
「山怪(さんかい)」の仕業(しわざ)を集めた本
昔から言われている、「狐や狸に化かされた」という話。それ以外にも、山やふもとの村で起こった不思議なできごと。
それは、山にきっと住んでいる、しかし、何なのかわからないので「山怪のしわざ」としか言いようがない。
そんな、ちょっと怖い(かなり怖いもあり)不思議な話ばかりがこの本に書いてある。そして「なぜ?」というモヤモヤが残るところに気持ちの悪い恐怖を感じます。
私には「あっ!それって、祖母から聞いた話と似てる!」との驚きがありました。
狐や狸や物の怪の話と通ずる内容もあり、「やはり物の怪(もののけ)はいるのだ」と怖いながらも嬉しくなってしまったのです。
以下は、祖母から聞いた話です。ちょっと怖いかもしれないので怖がりの人は読まないでください。
祖母から聞いた話
狸に化かされた美容師さん
これは私の祖母の友人の話です。彼女は美容師さん。
当時、美容師さんは、婚礼のしたくに呼ばれたそうです。それは花嫁衣裳の着付けと、髪をセットするため。道具を持って、花嫁の家に。
婚礼が終わり、ごちそうをもらって山道を帰る。途中で日が暮れました。
すると、通り慣れた道にもかかわらず、ぐるぐる回ってもとのところへ戻ってきてしまい帰れません。
そして、道の先に、なぜか花嫁衣裳を着た花嫁さんがうずくまっています。近づくと、それは飛びあがって逃げていくのですが、人ではなく狸のような生き物。
さんざん迷った挙句に、やっと帰り道を見つけて家に着くと……。
お土産にもらったごちそうから、魚や油揚げだけが、消えていました。
この本の中にも、山で猟をするマタギが、「山へ行くのに、油あげや肉などをお弁当に入れてはいけない」というくだりが。それは、脂っぽい食べものを狙って山に住む何かが悪さをするからです。
狐火と、白い物の怪(もののけ)たちの追いかけっこ
これは、私の祖母の経験談。
山を一つ越えた先に祖母の友人がいました。
祖母がその友人のところへ遊びに行って、おしゃべりを楽しんでいると、ついつい時間を忘れ、友人の家を出るのが遅くなってしまったことが何度もあったそう。帰る途中の山道で日が暮れてしまったのです。
一度は、狐火を見ました。沢山の提灯が、山のほうに連なってワーッと揺れています。ぞっとして駆け出すと、しばらくして消えてしまい、元の暗闇になりました。
もう一つは、山のふもとの無人のお寺。先ほどの友人の家からの帰り。そのお寺の前を通るのですが、何の気なしにお寺をながめて驚きました。
白い着物を着た、3メートルはありそうな巨人と1メートルくらいの小人が、建物の周囲をくるくると追いかけっこをしています。
それを見て腰をぬかしそうになって、死に物狂いで駆けて家へ帰ったそう。
白い着物を着た、人のような大小の生き物。狐や狸が化けているのか、それとも……。
実は、この本の中に、山の祠(ほこら)で手を合わせたら、山神さまがついてきたらしく、手を合わせた人だけにその姿が見えたという話が出てきました。そして、山神さまは、白い、袖の長い着物を着ているらしい、とも。
祖母が見たのは、山から下りてきた祖母についてきた、山神さまでしょうか??
「山怪(さんかい)」はいるのか
マタギの話をメインに取材してまとめたこの本。
「不思議なこと」と話しながらも、それが「狸や狐、その他の山怪」のせいだとは言わない人もいます。当人が酔っていたり疲れていたりしたからだとか、風などの自然現象として説明する人たちです。
けれども、著者はそれに疑問を投げかけています。確かに、それだけでは説明出来ない出来事だから。
あなたは「狸や狐、その他の山怪」を信じますか?
闇が減って、物の怪も減ったような気がしますが、それでも、うっそうと木々が生い茂った山の中には、私達がまだ知らない生き物がいるのではないか……。
私はそう思っています。
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