著者は、昭和13年生まれの科学者。京都大学の理学部を出てから理論物理学の研究者となり、現在は慶応大学名誉教授。
2012年6月に日経新聞の「私の履歴書」に掲載されたものを大幅に加筆修正したのが本書。
著者は現在70代後半。当時、女性が大学に行くことは少なかった。
そんな中でも優秀な女性は関西なら奈良女子大学、関東ならお茶の水女子大を選んでいた(結婚を考えて)時代に、京都大学に行く。
そして大学に残り、結婚後も奨学金を受けて海外でも研究。
仕事で夫との別居もあるなか、娘3人を育て、癌も乗り越える。
今でさえ、働く女性が子供を育てるのは大変。何のサービスもなく、夫の協力もなく(仕事についての理解はあったが家事は彼女がしていた)研究にまい進したことが怒涛のように語られる。
男女差別も著しかった当時の奮闘はさらっと語られているが、とにかく圧倒的に優秀で行動力があったことが著者を認めさせた理由だろう。
著者の行動力、例えば、夫が会社からイギリスの大学院へ1年派遣されることが決まった時、イギリスの大学から”授業料免除、寮費・食費も免除、月々の奨学金”を手にして、夫の3ヶ月後にイギリスに行ったことが書かれている。
インターネットのない時代。京大の近くにある英国文化振興会へ行き、そこの図書館で大学と名のつくところ30余りに手紙を書いたらそのうち2校から返事がきたというのだ。正式な手紙はタイプするのが普通だが、タイプライターがないから手書き。
1ドル360円、自費では海外に行くのが難しい時代の快挙であるが、”信じて行動する”ことの素晴らしさか伝わってくる。
著者が「よく聞かれる」という著者の哲学を紹介する。
1自分の可能性に限界を引かない。
2行動に移す。
3めげない。
4優先順位をつける。
5集中力を養う。
そして、「自分の手で獲得すると決める」こと。
最後に、「人生は楽しんだ者が勝ちだ」。
「私の履歴書」は自慢話のようなものもあるが、この人はとにかく凄すぎて、それを超越。読むと勇気が湧いてくると思う。元気のある時に読むのがお勧め。